顎関節治療

顎関節症とは

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メディアでも取り上げられることが多くなっている「顎関節症(がくかんせつしょう)」と呼ばれる症状を聞いたことがありますか?例えば…

  • 「口を開ける時に顎の回りが痛い…」
  • 「大きく口を開けられない…」
  • 「顎を動かすとカクカク音がなる…」

これらは顎関節症の3大症状と呼ばれます。思い当たる方は顎関節症の疑いがあります。では各々についてもう少し詳しく説明をしましょう。

顎関節症の症状

顎関節疼痛(口を開ける時に顎の回りが痛い)

顎関節症の症状の中で最も代表的かつ困る症状の1つがこの「顎の痛み」です。多くの場合、口を開けるときに顎の関節の周辺に痛みが出やすいです。時には、こめかみ・肩・首筋の筋肉に圧痛をおぼえることもあります。痛みが出やすいときは「大きく口を開けるとき」「固い物をかむ時」「朝起きて最初に口を開けるとき」が多いです。

開口障害(大きく口を開けられない)

通常であれば人間の顎は大きく口を開けると自分の指が3本分は横にして入ります。顎関節症の症状が進むとこのように大きく口を開けることができなくなります。にぎり寿司位の大きさの物が口に入らなくなると日常生活に不都合を感じます。朝起きたときから全く顎があかなくなった方もいらっしゃいました。開口障害の原因は大きく口を開けると痛みを生じるために開けられない場合と、顎の関節内の異常である程度以上開けられない場合があります。

関節雑音(顎を動かすとカクカク音がなる)

口をある程度以上開ける時に「カクッ」と音がして、また閉じる時も小さく「カクッ」と音がするとがあります。これが関節雑音です。この「カクッ」という音以外に「ジャリジャリ」「カックン」「ゴリゴリ」と音を感じる時もあります。この関節雑音に関しては3~4人に1人の人に大なり小なりあるという研究データもありまして、開口障害を伴わない場合は心配しないでいいことも多いですが、音がだんだんと大きくなってきた時や、痛みや開口障害を徐々に伴うようになるときは注意が必要です。

顎関節症の主な原因についても簡単にご紹介します。癖やストレスなど日常の過ごし方が原因になっていることが多いので、治療をしなくても自然と治るケースもあります。
精神面が原因の場合は「十分なカウンセリング、精神ケア、適切な投薬」などの治療が効果的です。

顎関節症の主な原因
  • 歯ぎしり、食いしばり
  • ストレス
  • 偏った噛み癖、咬み合わせの悪さ

顎関節症治療

歯科医院での顎関節治療歯科医院での顎関節症治療は「診断」から始まります。今の症状が始まった時期、症状の強弱、変化などの問診を行います。次に顎の関節部分を触診して、顎の開口時・閉口時や関節が十分に動いているか、筋肉に圧痛などないかを調べます。その後はパノラマレントゲンの顎関節モードで関節の形などに異常がないかを撮影して調べます。
また、必要に応じて大学病院などで顎関節MRI検査を行うこともあります。診断結果によってはリウマチの様に早急な治療が必要となるケースもあれば、一定期間は様子を見て治療を行わないケースもあります。では診断結果で顎関節症の治療が必要となった場合、どのような治療を行うかご説明します。

マウスピース着用や咬み合わせ調整

就寝時に使用するマウスピースを着用したり、歯の咬み合わせを調整します。

開口練習

ひどい痛みなどの急性症状が強くない時は、まず開口練習を行います。できれば入浴時または、入浴後の体があたたまってリラックスしている時に、自分で大きく口を開けた時より、3~5mm程度、自分の指を使って力を入れて大きく口を開ける練習をします。ほんの少し痛みを感じる程度が目安です。これを1日1回のペースで50回づつおこないます。

スプリント療法

スプリントはボクシングなどのマウスピースに似ていますが、歯の形を取って、その人に応じた歯のマウスガード(スプリント)を作製します。これは咬合安定用のスプリント(スタビライゼーション・スプリント)と関節円板整位用のスプリント(リポジショニング・スプリント)等があります。
咬合安定用のスプリントは夜間、就寝時などに装着してもらって顎の関節や筋肉の負担を軽くするのが目的です。食いしばり防止の効果もあります。関節円板整位用のスプリントは顎の関節の中でずれてしまった関節円板(クッション)を元にもどすために使用します。 どちらのタイプにしても、使用する時間、使用方法は歯科医師の指示に従うことが大切です。

関節円板整位術

長期間、カクカク音がしていたのに急に音がしなくなったと思って喜んでいたら急に口が開かなくなったという方が時々います。これは、関節円盤が前方にずれたまま元に戻らなくなってしまっているためのことが多いです。症状が出て1週間以内であれば歯科医師がこの円盤を元に戻す従手整腹を行うことがあります。

咬合治療

最近ではこの咬合治療を余り行わなくなってはいますが、スプリント療法や関節円板整位術によって、咬み合わせがかなり「ずれ」て安定してしまう場合、この「ずれ」を修正するために歯の上に金属やセラミックをはりつけて咬合を再構成する事があります。

自己管理・家庭療法

顎関節症の治療でこの自己管理・家庭療法は非常に大切です。まず適度に体を動かしてもらうこと、例えば体操や散歩など1日に1回は必ず行ってもらいます。これだけで症状が改善する方もいらっしゃいます。他に、痛みが激しい急性期の冷湿布、冷たいタオルなどで患部を冷やす方法、また、急性期を過ぎた後での温湿布、蒸しタオルなどで患部を暖める方法もあります。また、食いしばりを意識的にやめてもらったり、姿勢などを注意して変えてもらうこともあります。

治療期間と費用

問診、診断、治療計画の説明等で週に1回の通院を3~4回してもらうことが多いです。その後、スプリント療法が必要な方は2週間もしくは1ヶ月に1回程度の通院となります。2~3ヶ月で治癒する方が多いのですが、ほとんどの方が長くても6ヶ月以内で終了します。
費用ですが、当院ではほとんど全ての顎関節症治療が健康保険の範囲内で可能です。スプリント作成は、タイプや負担率(2割3割)により違ってきますが約3,000~6,000円の負担となります。

顎関節症は怖くない

顎関節症で悩まれているなら顎関節症のことを過剰に悩まれる方が多くいますが、症状が酷くない限りあまり心配する必要はありません。その理由は…

  • 多くの方が顎関節症の症状を経験されています
  • セルフリミッティング(自然に治る可能性がある)
  • 治療自体も簡単な方法で治ることが多い

この様に顎関節症が決して過剰に恐れる病気ではないことが理解してもらえたかと思います。
もし症状がひどくなってしまい一般の歯科医院では対応が困難になった場合は、大学病院の専門の顎関節症口腔顔面痛み外来と連携を取って治療を受けてもらうことが可能ですので必要以上に悩まずに歯科医師にご相談ください。
最後に日常生活での顎関節症予防と症状が出た時の注意点をご紹介します。

日常生活での予防

  • ストレスを溜めないようにする
    なかなか難しいですがリラックスするのが一番。
  • 顎に負担のかかる癖を改善する
    うつぶせ寝や頬杖、猫背などに気をつけ、左右の歯をなるべく均等に使ってください。

症状が出た時の注意点

  • 無理に口を開けたり、硬いものを食べない
    症状があるときは、無理に顎を使わず様子を見ましょう。
  • 温めたり、冷やしたりする
    顎の関節のところを温めたり、冷やしたり(どちらでも構いません)すると楽になる場合があります。
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