寝たきりの方が?
私は28年前、岡山大学歯学部を卒業後、補綴科(ほてつか)に研究生として残りました。
補綴の腕を上げたかったからです。
開業後も、補綴の中でも総義歯の作成には力を入れてきました。
当院で行っている自費の総入れ歯治療は「超精密入れ歯」BPS法です。
http://www.11ireba.com/001superireb/index.html
岡山でもいつまでも美味しく食事ができることをサポートしようと
開業した23年前より、歯科医院に通えない寝たきりの方を対象に
自宅や施設を訪問する訪問歯科診療、歯科の往診を始めました。
23年前の当時は岡山県下では、当院とあと1つの歯科医院しか
歯の往診はしていませんでした。
ある時に往診の依頼を受けました。
「寝たきりの母が食事ができません、どうも入れ歯の具合が悪いようです。
往診してもらえませんか?」
私と衛生士の妻が訪問すると、部屋のカーテンは閉め切られた
薄暗い部屋のベッドの上にそのおばあさんはいました。
カーテンを開けると眩しいので一日中、カーテンを閉めているそうです。
おばあさんは、お私や妻の問いかけにも、ほとんど反応はありません。
入れ歯の修理を応急的にして、家族の方のご希望で新しい総入れ歯を
作ることになりました。
何度目かの訪問時に新しい総入れ歯ができて、その入れ歯を
嵌めたときの瞬間を私は忘れることができません。
新しい入れ歯を入れて「はい、噛んでください!」と
しっかりと噛んでもらった瞬間、そのおばあさんの目が
「カッ!」と明るく見開いたのです。
翌週に、入れ歯の調整でお宅をお邪魔しました。
すると、いつもの薄暗い部屋におばあさんはいませんでした。
嫌な予感がしたのですが、その予感は杞憂に終わりました。
驚きました!
先週まで寝たきりだったおばあさんが外の庭にいて
杖を突きながらですが歩いていたのです。
少し前まで、寝たきりだったおばあさんが入れ歯を嵌めるだけで
短期間で自分の足で歩くことができるまで回復したのです。
歯のかみ合わせが凄く大切で、歯が体の幹であることを
実感した瞬間でした。
しかし、そんな方ばかりなら私も嬉しいのですが
そんなうまく行く方ばかりでは現実はありません。
入れ歯を作ったのだが、調子が悪く、何度も何度も調整をしても
「この入れ歯では良く噛めない!」と言われたこともあります。