インプラントの失敗とトラブル
歯の欠損に対して、インプラント治療をおこなう歯科医院が
最近ではずいぶん増えてきました。
インプラント治療の成功とは 、患者様がインプラントを埋めてその上に人口の歯を装着し終わった時に、痛みや腫れがなく、しっかり噛む事ができ、患者様が満足された状態だと思います。
その満足されたよく噛める状態を、なるべく長期間保つことが、私達歯科医師の使命だと思っています。
そのためには、治療前の十分な説明はもちろん、治療後の定期的なメンテナンスをしっかり受けてもらうこともとても大切になります。
インプラント治療で失敗しないためには、まずはインプラント治療に対する十分な理解が必要です。
ここで、改めて基本的なインプラント治療についての説明をいたします。
インプラント治療とは、歯を支える歯槽骨に、チタン製の人工歯根を埋入し、骨と結合した後に、自分の歯の様に、固定式の歯を入れてしっかりと噛めるようにする治療法です。
このインプラント治療法は、以下のように3段階の治療から成り立ちます。
①歯槽骨にインプラントを埋入する手術(一次手術)
②骨と結合した埋入インプラントの頭を出す手術(二次手術)
③インプラントに冠(歯)を接続する処置(上部構造装着)
以下の4点も必ず事前にご理解ください。
(1)インプラント手術に関しては、局所麻酔を行い、歯肉を切開して歯槽骨に専用のドリルを使用して穴を開けてゆきます。
歯槽骨の状態によっては骨補填剤を使用する場合もあります。特別なガイドを使用する場合は、歯肉の切開は行いません。
(2)手術後、約1週間から10日で抜糸を行います。必要があれば翌日消毒に来て頂きます。
(3)手術後は、手術した部位に腫れや痛みがでますが、通常4~7日で鎮静します。 まれに、内出血や、一時的なしびれが出る場合もあります。
(4)インプラントの生着率は90~95%程度といわれています。もし生着しなかった場合には、インプラント体の除去を行い 可能なら再埋入を行います。通常再埋入は、骨の再生を約1ヶ月~4ヶ月程度待ってから行います。
再埋入に伴う費用は医院で負担しますが、お薬の代金・再診料や検査料などは患者様に負担していただく場合があります。
インプラント治療を考えている方に、ここで必ずご理解してもらいたいことは、
インプラントは、一度オステオインテグレーションと言って、骨との結合を得ることができると、長期にわたって、良好な経過を示す素晴らしい治療法ではありますが、初期の段階で、インプラントと骨と結合しないケースがあると言うことです。
上記のように、上顎で90%、下顎で生着率は、95%と言われています。
95%と言う数字は、私たちが100本のインプラントを入れると、5本はうまく行かないで除去しないといけないことを示しています。
うまく行かない理由は様々ですが、インプラントを埋入する場合に、熱を与えすぎてしまって骨が壊死を起こす場合や、術後に細菌の感染を起こす場合が多いです。
どんなにうまいインプラント専門医でも、医療の世界ですから、成功率が100%ということは決してありえません。
また、インプラント治療でもう一つの高いリスクが、「神経の損傷」です。
下顎の骨の中に通っている神経を、インプラント治療の時に誤って傷つけてしまうと、しびれ等の症状が残る場合があります。
しびれは、軽度のものであれば、数ヶ月で回復することもありますが、重症の場合は、長期間麻痺が残ることもあります。
この神経の損傷は、術前にCTと言う検査をすることで、ほとんど防止することが可能になっていますが、それでも、人間が行う行為ですから、今後は100%安全とは言い切れません。
このように、インプラント治療には、大なり小なり必ず外科処置を伴いますので、
リスクがあるということを、事前に十分に認識して下さい。
あなたが受けようとしているインプラント治療の内容を、あなた自身が事前に十分知っておくべきなのです。
歯がなくなった場合に、選択する他の治療法の、入れ歯、ブリッジにも、
様々なメリット、デメリット、そしてリスクももちろんあります。
入れ歯やブリッジと比べて、インプラント治療が、機能面、審美面においてメリットが多いため、最新の歯科医療として、インプラント治療が定着していることも事実です。
現在の歯科におけるインプラント治療の状況を、まずはよく理解してもらうこと、次に患者様とインプラント治療を行う歯科医師の間の相互の信頼関係と正しい技術が、インプラント治療の成功率を、より高めていくことになると、私は思っています。