【世にもおそろしい感染症の話 〜その正体は「誤嚥性肺炎」〜】
こんにちは。岡山市の「岡山なかの歯科・矯正歯科クリニック」院長の中野浩輔です。
今回は、皆さまにぜひ知っていただきたい「命に関わる感染症」についてお話します。
感染症というと、多くの方はまず“新型コロナウイルス”を思い浮かべると思います。
しかし、実は私たちの身近にありながら十分に注意されていない、そして毎年たいへん多くの命を奪っている恐ろしい感染症があります。
それが 「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」 です。
◆コロナよりも多い死者数をご存じですか?
2020年、新型コロナウイルス感染症により亡くなった方は9,110名。
一方、同じ年に誤嚥性肺炎で亡くなられた方は 40,354名 にものぼります。
実にコロナの4倍以上です。
さらに恐ろしいのは、今後も患者数は増えると予測されており、2030年には年間129,000人が命を落とすと推計されています。
「静かに」「気づかないうちに」「ある日突然」全身状態を悪化させる——それが誤嚥性肺炎の怖さなのです。
誤嚥性肺炎とは?
本来、食道へ運ばれるはずの食べ物や飲み物、そして唾液に含まれる細菌が誤って気管・肺の中に入り込んでしまい、肺に炎症を起こす病気です。
特に高齢者に多くみられ、いったん発症すると体力が落ちて治療が難しい場合もあり、
再発を繰り返すことで命を縮めてしまうことも少なくありません。
なぜ高齢者に多いのか?
理由は大きく3つあります。
嚥下(えんげ)機能の低下
年齢を重ねると、飲み込むときに必要な筋肉が衰え、誤って気道側に入りやすくなります。咳反射の低下
誤嚥した際、本来であれば強い咳が出て異物を外へ追い出そうとしますが、
その反射が弱くなります。お口の中の細菌数の増加
歯周病、放置された虫歯、義歯の汚れなどが原因で細菌の数が増え、
それが肺へ入り込むと重症化のリスクが一気に上がります。
つまり、「飲み込む力の低下」と「口の中の細菌の増加」が重なったときに、誤嚥性肺炎は大きく進行してしまうのです。
恐ろしい病気の対策は「口腔ケア」
誤嚥性肺炎は恐ろしい病気ですが、裏を返せば 正しい予防を行えば防げる病気 でもあります。
その最も重要なポイントが、
✔ 日々の歯磨き・義歯の清掃などのセルフケア
✔ 歯科衛生士による専門的なお口のクリーニング
✔ 定期的な歯科受診による「嚥下機能のチェック」
です。
誤嚥性肺炎は“口から始まる病気”であると同時に、“口から予防できる病気”なのです。
歯科医院が「全身の健康を守る入口」
私たち歯科医師・歯科衛生士の使命は、単に「歯を治す・抜く」ということに留まりません。
特に高齢社会を迎えた今、歯科医療は「お口の健康を通じて全身の命を守る医療」へと役割が拡大しています。
実際、専門的な口腔ケアを継続的に行うことで、誤嚥性肺炎の発症率が大きく下がることが
多数の研究で証明されています。
胃ろうの患者さまや要介護高齢者の方で、口腔ケア開始後に肺炎の再発が減少したという例も珍しくありません。
当院でできる予防ケア
当院では誤嚥性肺炎を防ぐために、以下の取り組みを行っています。
・歯科衛生士による徹底した専門的クリーニング
・義歯の清掃指導と定期調整
・歯周病の早期発見と治療
・口腔乾燥の改善指導
・嚥下機能の簡易チェック
・高齢者・要介護の方へのご家族向けケアアドバイス
「歯の治療」ではなく、「呼吸・食べる力・生きる力」を守るための医療だと考えています。
最後に
誤嚥性肺炎は目立たず、静かに進行します。
だからこそ、「気づいたときにはもう遅い」というケースが多い病気です。
ですが、日頃の口腔ケア次第で予防することができる数少ない命に関わる感染症でもあります。
これからも当院は「お口の健康を守ることが、全身の健康につながる」という考えのもと、
地域の皆さまの命を支える医療を続けてまいります。
ご家族に高齢の方がいらっしゃる方、ご自身の将来を見据えて健康管理をしたい方も、
ぜひお気軽にご相談ください。
お口からはじまる健康づくりを、私たちと一緒に始めていきましょう。
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