歯医者の仕事は、その人の人生を変える力がある!
今から何年前になるだろうか?
当院で治療を既に終えて、定期検診に
ずっと通われていた、ある音楽大学の先生から
「中野先生、実は相談があるんです!」と
言われた。
話の内容は深かった。
その先生が教師をしている音楽大学の受験のために
長崎の高校を卒業した18歳の高校3年生の女子が
岡山に来ていた。
受験の当日の朝、その女子は飲酒運転の車に跳ねられてしまい
18歳の若い女性の前歯を4本と、受験資格を失ってしまった。
当時、その事件は有名になり、新聞やテレビでも大きく報道された。
受験資格に関しては、事態を考慮した大学が直ぐに動いて
後日、特別に彼女だけの受験日を設けて
彼女はその音楽大学に合格して、晴れて音楽大生となった。
問題となったのは彼女が飲酒運転の人に跳ねられて
失ってしまった4本の前歯である。
飲酒運転の運転手は逮捕はされたのだが、民事裁判では
その人に金銭的に彼女に1銭も支払う余裕は無かった。
受験を終えて長崎に帰った彼女と両親が訪れた歯医者では
4本のインプラント治療に250万円の見積もりが出た。
これから音楽大学の入学金も授業料も引っ越し代金も
かかる彼女の家庭には250万円の大金を支払う余裕は無かった。
最初、彼女が当院に来られた時は、長崎の歯医者で作った
入れ歯は入れていなかった。
なぜなら彼女の犬歯には黒々と光る入れ歯の針金
クラスプが大きく見えていたからだ。
当院での見積もりは前歯2本のインプラントと4本の
セラミックで100万円前後、長崎の歯科医院の
半額以下の金額に、わざわざ彼女の両親は車で
長崎から岡山の当院まで説明を聞くために来院された。
しかし、彼女は当時からトランペット奏者であったので
治療に関する準備は難航した。
交通事故で彼女は歯だけでは無くて顎の骨まで
大量に失っていた。
本当はGBRと言う骨補填やCTGと言う歯ぐきの移植も
したかったのだが、トランぺットが1か月も2か月も
吹けないことに彼女は凄く拘った。
私は当時、彼女のレントゲンや写真を持って
ロスに飛び、世界的な前歯のインプラントの権威でもあるカン先生に相談した。
彼女のインプラントは普通より緊張した環境で
行われた。
1mmも誤差は許されなく
ガイドサージェリーでピンポイントに
私はインプラントを2本埋入して
即時で固定式の仮歯を入れた。
オペから3か月後、最終的な彼女に
セラミックの歯を入れた時の
鏡を見た時の彼女の表情は私は
今でも決して忘れることは出来ない。
真面目な彼女は術後も定期検診を受けていて
卒業するまでは、ずっと当院に来院されていた。
卒業後、彼女の希望通り、長崎の高校の
音楽教師になったことは、元の彼女の
担任の先生から聞いていた。
その彼女の元の担任の先生から今日メ-ルが来た。
「いつもお世話になっている 〇○○〇です。
以前、〇〇○○大学在学時、入学試験で来学中に
飲酒運転の車と事故で前歯のインプラントでお世話になった
○○○○ですが、長崎にて音楽教員をしています。
今年度からは○○○○高校音楽教諭として頑張っています。
また本日は長崎県の聖火ランナーとして走ったと
一報もいただきました。
(苦難を乗り越えて教員になったということで選ばれたようです。
歯も綺麗に整えていただき前向きに頑張っています)
お世話になった先生にご報告でした。」