ごくせん
土曜日の4時半の方の診療の残りを
他のスタッフに任せて、車で岡山空港へと急ぐ!
5時25分発の羽田行きのANAに搭乗するためだ。
飛行機に乗り遅れてはまずい!
しかし1分でも診療室で患者さまの診療を行いたい!
だから私は、いつもギリギリの時間に空港へ到着する。
5時25分なら、5時10分にカウンターへ行けば間に合う。
4時40分まで診療をして、電光石火、1分でユニフォームから
スーツに着替えて岡山空港へと急ぐ!
この道はよくスピード違反の取り締まりをしている。
制限速度のギリギリで急ぐ!急ぐ!
運よく第2駐車場が空いていたので
予定より早く5時5分にはカウンターへ着いた。
それでも、そんなギリギリの時間にチェックインする人は珍しく
私がチェックインする時間にはいつもほとんど周りに人はいない。
しかし今日はいた。
それも「ごくせん」に出てくるテキヤのお兄ちゃんのような
色柄物の上下のヒラヒラした和服と雪駄のいでたち。
(たこ焼き屋のお兄ちゃんがよくきているやつ!)
身長は180cmはある!無精ひげがちらっと見える。
「まずい!!ほんまもんのやーさんだ。
目を合わせないようにしよう!!」
目を合わせないように、そそくさとカウンターを後にした。
サミットの影響か、出発が定刻の15分遅れとアナウンスがあった。
「まずいな!待ち合わせの時間に間に合わない!!」
一番に機内に入ると、私の向こう側に背の高い刺青模様の服を来た
たこ焼き屋のおっちゃん?が入って来た。
「Nさん?」
私は小さく唸った。
その人は、あの本を数冊出していて、私が岡山で講演会にも参加したことのある
お話が無茶苦茶うまいNさんだった。
「しまった!外見で判断しすぎた!!あそこで挨拶すべきだった。」
出発すると飛行機の椅子を移動して、拶しようと思っていたのだが
Nさんはヘッドホンを逆さにつけて、おもむろに音楽?いや落語?(私の想像!)を聞き出した様子。
羽田に着いたら挨拶する時間はあるだろうか?
羽田空港へ15分遅れで着いたとき、他の乗客の方がすべて
すぐにでも降りようと立ち上げがっている中、Aさんは、その場になっても
ヘッドホンを逆さにつけたまま、落語?を堪能されていた。
Nさんへの挨拶は、あきらめて、京浜急行の駅へと急ぐ!
重い荷物を持ったまま、誰よりも早く歩き、誰よりも早く、空港からホームへと急いだ。
運よく、羽田空港から品川まで16分の特別快速?に乗れて
汗を渇かせながら、何とか品川駅に着いた。
電車から降りた私の目の前に
なんと先ほどのNさんが涼しい顔で降りて来られた。
えっ!何で??
私が空港内で、走るように小走りで歩いて、汗をかきながら
何とか品川に到着したのに、Nさんは涼しげな顔で
今にも口笛を吹き出しそうに階段を上がっていった。
私がNさんに、挨拶をしたかって?
私は唖然となってその場に立ち尽くすのが
精一杯だった!
何で??