大阪のおじちゃん
私の親戚に「大阪のおじちゃん」と呼ばれていた人がいた。
大阪のおじちゃんは私の親戚の中では珍しく、
大企業の重役をされていてお金持ちの人だった。
背も高く男前で気前も良く、私にとっては自慢のおじだった。
おじ夫妻には子供がいなかった為か、
私は大阪のおじちゃんに小さな頃から
すごく可愛がられていた。
おじも年齢を重ね、あるときに今後のことを考えて、
身辺整理をするということで、私は大阪の箕面のおじの家に
呼ばれていた。
「好きなものを持って帰り!」
おじは美術や絵画が好きで、私は部屋の中の
気に入った絵画とか、リトグラフを7~8点、無料で
もらうことになった。
その絵画やリトグラフは後に宅配便で私の元に届いた。
その時に、おじが私にこう言った。
「こうちゃんにしか、預かってもらえないのがある。
預かってくれるか?」
話を詳しく聞くと、それは三重県にある別荘地だった。
別荘地が無料で貰えるのか?ということで
舞い上がった私は即座にOKを出した。
おじはその土地をバブルのころ、数百万円で
購入したと聞いた。
数百万円の別荘地を無料で貰える?
ラッキーとしか言えない。
妻には私たちが仕事を辞めて引退したら、
「三重県の高台にある海が見えるきれいな土地に別荘を立てて、
そこで暮らすのもいいかもしれない。」という話をしていた。
高台にあり、綺麗なリアス式の海岸が遠くに見え
今は芝生が貼られている綺麗な別荘地を私は
勝手に妄想していた。
三重県は岡山から遠くて、別荘地を私が実際に見ることは
長年無かったのだが、ある年にお伊勢さん参りの後で
三重県のその別荘地をレンタカーで実際に見ることにした。
妻と二人で現地について驚いた。
別荘地とはきいていたが。その場所は原野だった。
一帯に古い別荘らしきものの残骸2~3棟あるのはあったのだが
辺り一面荒れ果てた原野であった。
近くにはコンビニは勿論スーパーも店舗も全く無かった!
「原野商法?」
もしかしたら、おじは原野商法に引っ掛かってしまい
その後始末を私に頼んだのだろうか?
「こうちゃんにしか預かってもらえない。」という意味が
そのときはじめて、私には理解できた。
別荘地でも、原野でも、なぜか管理業者という不動産屋さんがいて
毎年のように、私の元に年間の管理料金の請求書がまわってきていた。
1年間で3万円少しであれば、今後の出口も考えて払おうということで、
わたしは40年近く管理料を払い続けて来た。
そんな私のもとに昨年ある大阪の不動産屋さんから1本の電話が入った。
「三重県のあなたが所持している土地を数百万円
で買いたいと言う人がいる。売却する気はありますか?」
「ある、ある、大いにあります。ゼロ円でも引き取って貰いたい!」
渡りに船とは、このことだ。
しかし、よく考えてみると、どうも話が怪しい!
あの土地の現地を見れば数百万円で買い取ることはあり得ない。
その不動屋業者のホームページも見ると別荘地を数百万で買い取った実績が
数多く掲載されている。
その不動産業者の名前でGoogle口コミで調べてみると
「出るわ、出るわ!」☆1つ、悪口のオンパレード
その不動産業者は、原野商法で土地を買って困ってる人の名簿を集め
その名簿に片っ端から電話して「あなたの土地を買いたいと言う人がいる、
まずは現地に入って調査するから数十万円の調査費が掛かるから支払え!」
と言うハイエナみたいな商売をする業者と言うことがわかった。
原野商法で困ってる人を集めて、また詐欺をするような
最低の会社であった。最低でも合法なのだろう。
私は調査を丁重にお断りした。
そして、もうしばらくこの土地を所有する決定をした。
毎年のように、名古屋の不動産屋業者からは、年間管理料を
払ってくださいと言う手紙が届く。
本日も届いた。
あの原野でどんな管理をしてるんだろう?