マロークリニック 続編
数年までは、当院で初めてインプラント
治療を受けられる方がほとんどだった。
しかし、ここ数年は他院でインプラント治療を
受けたものの結果が芳しくなく、当院で
リカバリーの処置を受けられる方が増えてきている。
そんな時にお願い。
どのメーカーのどのインプラントを使用していて
アバットメントは何で?上の歯は何で?仮止めか?
本セットか?インプラント治療に関する詳細な
資料をもらっておいてもらいたい。
最近のインプラントは韓国産も含めて
多種多様でリカバリーは大変だ!!
ポルトガルのマロークリニックリスボンの規模は桁違いであった。
徒歩2分にあるマリオットホテルリスボンは
素晴らしいホテルではあったが、そのホテルより
マロークリニックはより高く、より近代的に見えた。
そして、ホテルより高い全ての階には
インプラントをはじめとする口腔外科や
他の専門分野の歯科だけでなくて、
医科も、美容院も、スパも、はたまた
ヘルスクラブまで入っていた。
その中の7階にマローエデュケーションはあり
ここでは世界中から訪れる多くの歯科医師に対して
インプラントを中心の多くのプログラムが
提供されていた。
5月3日の土曜日のその日にこのエデュケーションプログラムを
利用するのは世界で私一人だった。
真っ赤なユニフォームに着替えた私は
早朝の8時半にすぐにオペ室に通された。
そこではポルトガルの北部から来ていた
女性の今ある上の顎の10本の歯を全て抜歯して
その場で4本のインプラントを埋入して
上の固定式の歯を即座にいれるAll-on-4の
オペが既に始まっていた。
麻酔に始まり、抜歯、そして歯肉の剥離
全てをつぶさに私は見学させてもらった。
オペ室には外科専門医が一人、補綴専門医が一人
アシスタントが二人以外は、私しかいない。
通常のオペの見学では10名程度がオペ室に入り
ほとんど人の頭でオペの見学は難しいことが
多いのだが、今回は違った。
今回のオペを担当した女性歯科医師のアナ先生は
初対面の東洋人の私に真摯に接してくれ
多くの質問を受けいてもらい、PCで多くの
写真を見せてもらった。
今回のオペは、私が感じるに凄く難しいオペだった。
10本の歯を抜くと、骨の欠損する場所が多く
また上顎洞も狭くて、ピンポイントにインプラントを
埋入する、それも高いトルクで初期固定を得るように
するにはかなり困難と感じていた。
そのオペをアナ先生は、ラジオをかけて音楽を
聞きながら、鼻歌まじりで淡々とこなされた。
このオペの見学で一番私が驚いたことは、
マロー先生のクリニックでのAll-on-4が私たちが
今まで学んできた一定のプロトコールに
基づいていたことだった。
上顎洞に小さな穴をあけ、プローブで前壁を探る。
清掃性の良い補綴物の形態のために、骨をガンガンと
削りフラットにする。
インプラントの初期固定を高めるために
ドリリングを骨の硬さによって、使い分ける。
今、目の前で行われているインプラントのテクニックは
決して私が知らないテクニックではなく
知っているテクニックを淡々となお着実に
行っているのに過ぎないのだ。
私はマロー先生が開発したAll-on-4のテクニックは
素晴らしいと思っている。
歯で困っている方が、大きな外科の処置を回避して、
少ない本数のインプラント、それも外科的侵襲が
少ないオペの方法で、即日で固定式の歯が手に入る。
そのAll-on-4の総本山に私が来ている喜びを
私は心から噛み締めながら、ランチのフィッシュ&チップスを
噛み締めていた。
そこに、今回私の見学、研修を全サポートしてくれていた
パトリシアがやってきてこう呟いた。
「あなたは凄くラッキー!
ドクターマローが、上海から先ほど帰国して
あなたに会うために、今からここにやってくる!!」
そして、そのパトリシアの話の10分後
私の前に背が高く、笑顔の男性が現れた。
その人は私が憧れる
ドクターマロー本人だった。