矢島美容室
私たちのチームでは
忘年会のかくし芸はどうしよう?
マジックを行うチームや
劇を行うチームがあると言う情報が
入り乱れる中、私たちはどうしよう?
今回優勝のチームと、準優勝のチームには、医院から豪華賞品を出す約束をしていた。
私はその豪華賞品を求めて、右往左往もしていた。
妹尾駅前に、美味しくて安い精肉店があると聞いて
日曜日にいそいそと出かけて行ったら定休日だった。
私があるチームに入ることで、そのチームが不利に
なることも、有利になることも避けなければいけない。
だから、カッコいいこと?よりは、恥ずかしいことにチャレンジしたい!!
そんな思いから私は今年はやった歌を振り付けで歌うことを提案した。
白衣の衣装に、緑や青の布きれを首に巻いて「羞恥心」のパフォーマンスでも
いいのだが、私の中ではインパクトが、弱い!
そんな私が、ふと見てしまった、FNS歌謡祭で
矢島美容室の3人が派手な衣装とメークで歌っていた。
「これに決まり!」
5人で矢島美容師をすることに決定した瞬間だった。
しかしそれからが大変だった。
するなら、衣装はどうするの?かつらは?音楽は?振り付けは??
難問が山積みだった。
衣装なんて、ロフトかドンキに行けば、山積みで売っているはず!
そう思った私が、駐車場に入る車で大混雑のドンキに行っても
なぜか矢島美容室のドレスは売っていなかった。
ロフトでも別のスタッフが確認して品切れで、次回の入荷も不明と
報告を受けた。
ネットからも、品切れが続出で
ヤフオクで定価16800円の衣装が、26000円以上の高値が
付いていることを見た瞬間、その衣裳の購入はあきらめた。
こうなれば似たような生地を「うえすぎ」で買って
誰かに縫ってもらいしかない。
誰にもお願いできなければ、自分で手縫いで仕上げるしかない。
大丈夫だ!洋服は厳しくても、ドレスなら何とかなるはずだ!!
そんな思いを強く持っていた私だが、ある日、診療を終えると
テーブルの上に、キラキラの銀色の生地が置かれているのを
見て驚いた。
「こ、こ、、これは、どうしたの?」
私の悩みを見るに見かねた妻が、「たかすぎ」でピッタリの生地を
探してきてくれたのだ。
「○○さんが、ドレス、縫ってくれるって!」
この瞬間、私たちの矢島美容室は現実のものになった。
連日連夜の振り付けの猛特訓!
娘に「リズム感がない!」って駄目だしされながら
練習は続いた。
忘年会の前日、仕上がったドレスと、かつらを付けた私は
当身大の鏡の前に立って、驚いた。
「なんじゃこりゃ!」
昔、昔、「俺たちひょうきん族」の中のコーナーで
使われた「キリストさま」にそっくりではないか?(知らないよね)
足は太くて、短く、頭はアフロでよりでかく、ウエストはメタボ、色気も面白さも何もない!!
自分のイメージとあまりにも違いを感じた瞬間だった。
思わず明日の出演を辞退したいと思った瞬間だった。
たかさんは、背が高くてスタイルがいいので
あのカッコでもカッコいいのだ。
そんな誰でも理解できる事実に
やっと気がつく私だった。