一番好きな治療は?
色々と大変なことが
立て続けに起こる。
歯科医院の責任者として
こんなときこそ私が
しっかりしないといけないと
思いながら、目の前の困難から
逃げ出したい自分がいる。
乗り越えることが出来ない困難は
決して来ない!(中野裕弓さんの教え)
診療が始まる前の朝の時間、
当院の歯科医師は、その日に予約が入っている
患者さまのカルテに目を通して事前準備を行う。
技工物はきちんと届いているか?
その日の治療に使う材料は揃っているか?
機材の滅菌は終わっているか?
カルテを見ながら、その日の治療内容
を事前にイメージしながら、準備の再確認を行う。
カルテを見ていると、私たち歯科医師は様々な
治療を行っていることがわかる。
特に当院のように、住宅地にあって
0歳から100歳近くの幅広い年齢の患者さまが
来院され、また往診まで行っている歯科医院では
治療内容も多岐にわたる。
仕事なので好き嫌いは言いたくないのだが
誰にでも得意、不得意があるように、
治療内容にも、歯科医師それぞれ好みがあるようだ。
これはその歯科医師の先生の今までの
経歴に影響される場合も多い。
口腔外科出身の私の友人は、抜歯などの
切った貼ったの治療が、大好きという。
歯の根っこの根管治療と言う治療に
凄く闘志を漲らせる先生もいる。
入れ歯治療、それも総入れ歯の治療で
お年寄りの方と楽しく世間話をしながら、
入れ歯を調整することに無常の
喜びを感じると言われる先生もいらっしゃる。
最近では、私の友人数名もそうだが
インプラント治療が一番好きと言われる先生も多い。
オペ着を着ると、身も心も引き締まると言われる。
朝の時間、カルテを眺めながら
多くの歯科治療の分野で、私が一番
好きな歯科治療はいったい何だろうと考える。
私は補綴科と言って、前歯の差し歯や
入れ歯を作る専門の医局出身だ。
以前いた第1補綴科は、時代の流れと共に
インプラント再生補綴学に名前が変わった。
そのインプラント治療に関しては、
私はかなりの緊張を感じながらいつも行っているので、
大好きな治療とは、決して言えない。
泣き叫ぶ子供の治療も嫌いではないが、好きでもない。
私が一番好きな歯科治療は?
私が一番好きな歯科治療は??
あった!
患者さまの前歯の差し歯をやり返るとき、
今の差し歯を外して、一度仮歯に置き換える
治療がある。
テンポラリークラウンやプロビジョナルクラウンと呼ばれる
仮歯を作成する治療だ。
プロビジョナルになると、型をきちんと採って
技工士さんが制作することが多いので、
私が一番好きな治療内容は、その前の段階の
テンポラリークラウンをチェアーサイドと言う
患者さまの横で、その場で作る治療だ。
レジンと呼ばれる白いプラスティックを使って
その場で患者さまの前歯を、仮の歯を作る
治療が私は大好きだ。
前歯の形で、患者さまの表情は
どんどん変わってゆく。
綺麗な仮歯は、綺麗な表情を引きだして
綺麗なセラミックへと受け継がれてゆく。
最終的なセラミック治療では無くて
私は一番最初の段階の仮歯を作る治療が大好きだ。
1mmの歯の長さの違いが
大きな表情の変化を生む。
0,5mm角を丸めるだけで
歯の表情はぐっと綺麗になる。
その仮歯を作ってゆく工程が私は大好きだ。
そのテンポラリークラウンと呼ばれる仮歯は
場合によっては、プロビジョナルクラウンと呼ばれる
次の段階の仮歯へと昇格して、最終的は
セラミッククラウン等の綺麗な歯に仕上げられる。
私が好きな仮歯は、仮歯であって
いつまでも使われるものでなくて
一定の期間を過ぎると、お払い箱になって
捨てられる運命にある歯である。
だからこそ、私は仮歯が大好きだ!