瀬戸内海 二人ぼっち!!
インプラントのオペの後
在宅の往診に出かけ、急いで
戻り産婦人科で母親教室!
午後の4時を回ったころから体調に異変をきたす。
冷蔵庫のヨーグルトドリンクで元気を取り戻そうと
思ったが賞味期限が切れていた。
私たちは試乗したヨットに穴を開けてしまって
責任を取って、そのヨットを共同購入した。
26年前の8月が終わろうとしていた、ある日、
私と友人は二人で、西脇海水浴場の目の前に見えている
小豆島に、そのヨットで行くことを決断した。
友人が調べると、西脇から小豆島までは、フェリーなど大きな船の航路には
なっていなく、もし万が一漂流したり、停泊しても、大きな迷惑をかけそうにない。
順調に行けば片道2,3時間で到着する。
またその日の、潮の流れや天気も、私たちは確認済みだった。
万が一のために、カヌーのオールも、水と食糧と、海図も用意した。
仲の良いペンションのオーナーに万が一のSOSの合図も教えて貰った。
用意は万全だった。
その日の西脇には絶好の風が吹いていた。
私と友人のKは風を受けて順調に南へと下った。
すれ違ったり、横切るのは、小さな漁船か
小さなモーターボートばかりだった。
さっき出た西脇海水浴場が、だんだん小さくなって牛窓の全景も一望できた。
順調だった。
目の前に見えている小豆島は意外に遠く、予想を少し超える3時間で
到着した。
友人と二人で小豆島の地を踏んだ感動はいまだに忘れない。
夏の瀬戸内海は「なぎ」と言って夕方には風がピタッと止まる
時間帯がある。
その「なぎ」までにまだ数時間あるが、余裕を持って私たちは
早めに西脇へ引き返すことにした。
1時間くらいはとても順調に風が吹いた。
しかし1時間を超えたあたりから風向きがあやしくなってきた。
と言うより、いきなり今まであれだけ吹いていた風が
ピタッと止まってしまった。
まだ夕方までは時間があるのに?
しばらくそのまま風が吹くのを待っていた私たちは
30分経過しても1時間経過しても一向に吹かない風に
だんだんと焦りを感じ始めた。
でもそんな時のためにこのオールがあるのだ。
友人と二人でカヌーのオールで水を掻き始めた。
しかし、しかし、重いヨカタマランは
大の男2人で一生懸命オールで漕いでも遅々として進まない。
仕方がない!今度は一人がラダーと言う舵を持ち、順番に
一人が海に入ってバタ足でヨットを押し出した。
しかし、その頃には潮の流れが変わって行き、どんどん私たちのヨットは
東の方に押し流されてゆくばかりだった。
「このままじゃ大阪まで流される!」
さすがにお気軽な私もKも青ざめてきた。
段々と日が落ちて行き、闇の帳が訪れそうになる。
やばい!このまま日が落ちると私たちのヨットには全く明かりがない!
衝突される危険性が増す!!
私とKは行き過ぎる漁船やモーターボートに対して
数時間前に教えてもらったSOSの合図を送った。
海の男たち、絶対助けてくれる!!
しかし私たちのSOSが見えないのか?私たちの姿自体が
既に暗くなっている今、見えにくいのか?
誰も私たちを助けに来てくれない!
これは本気でやばい!!!
その時、一度行き過ぎたクルーザーが
私たちの姿を見つけて、引き返してくれた。
「どうした!」
「実はこれこれで漂流しているんです!!」
私たちの命の恩人となったそのクルーザーの男性は
私たちのヨットをロープで縛り、西脇まで引っ張って行ってくれた。
「あんまり無茶するんじゃないぞ!」
その男性は既に真っ暗になっていた西脇海水浴場のすぐ近くまで
クルーザーで私たちとヨットを引っ張ってくれて、
最後に私たち2人にそう言った。
今では友人Kと話す良い思い出だが
その時は、海水浴場の砂浜までヨットを引っ張りながら
クタクタで帰ってきた私たち二人は、大きな涙を流しながら
きつく抱き合った。
生きてて良かった!!