1個のワッフル
土曜日の午後、診療をお休みして
スタッフ全員での大掃除となった。
午後の遅い時間、私は足らない蛍光灯を
買うために医院を出たその足で、電気店の後
近くのケーキ屋さん「白十字」に向かった。
土曜日の夕方、それも12月25日の
クリスマスの日の夕方!ほとんどの
ケーキが売れ切れていた。
今日の大掃除に参加したスタッフの数は30名程度、
私は頑張ったスタッフをねぎらう為に、30個の
白十字のワッフルを買おうと思っていた。
「申し訳ありません!ワッフルは残り
11個しかありません。」
「ではワッフル11個、19個エクレアを下さい!」
と私はお願いした。
ワッフルは1個120円、エクレアは1個147円と
ひとつで27円の差があるので、私の中では
まずは安いものから買うことが経営者の常識と思っていた。
30個のワッフルとエクレアを包む箱は3個にもなり、
包むだけでしばらく時間がかかっていた。
包むのを待つ間に、白十字のお店に
小さな女の子が一人で入ってきた。
5歳か、6歳だろうか?
小さな女の子がたった一人で来るところを見ると、
恐らくこのお店の近くに住んでいると思われた!
「ワッフル1個下さい!」
可愛い声で女の子は注文した!
振りかえり、差し伸べた手を見ると
小さな手の平の中には、100円玉が1個と
10円玉が2個握られていた。
「ごめんなさい!ワッフルは売り切れたの。」
えっ!あっ、そうか!私が残り全ての
ワッフルを買ったのだ。
少し心が痛んだ!
このままじゃ彼女は手ぶらで帰るしかない。
私は大きな包みを店員さんに返して
「ワッフル1個を、エクレアに交換して下さい!」
と言って、お財布から残りの27円を差し出した。
お店の人は凄く恐縮して、私に何度もお礼を述べて、
その1個のワッフルを大切に白い紙袋に入れて、
女の子に渡した。
私は少しだけ良いことをした思いから
心を温めて、医院に戻った。
大掃除が全て終わったスタッフの前に
私は10個のワッフルと20個のエクレアの
大きな3個の箱を並べて、好きな方を取るように言った。
驚いた!
最初の20名のスタッフが20名とも
ワッフルではなくて、147円のエクレアを
選んだのだ。
なんだ!
私は最初から30個エクレアを買えば良かったのかと
少し複雑な思いをした。