Dr.中野の活動記録
2005-3-28
抜歯は敗北か?
私たち歯科医師は、患者様の健康な歯を1本でも多く、1日でも長く
健康な状態で機能させることを一つの目標にして日々頑張っているつもりだ。
しかし今日来られた2人の患者様には考えさせられた。
お一人目は歯周病の状態が凄く進行していて今日一日で4本の歯の抜歯となった方。
歯を抜く「抜歯」は私たち歯科医師にとっては敗北であると常々思っていた。
しかし今日の患者様は「今まで歯がグラグラしていていつ抜けるか心配だった!」
「前歯の形もこの仮の入れ歯の方が前よりきれいでうれしい!!」と言ってくれた。
抜歯をした後の嫌な感情がふっと軽くなった。
私たち歯科医師は少しでも患者様の歯の健康を維持するのは当たり前ではあるが
単に持たない歯をいたずらに長引かせるだけが患者様の喜びでは決して無い。
必要な抜歯は決して敗北ではないのだ。
お二人目は他院で3本の抜歯を宣告されて入れ歯になると診断されたのだが
お友達の助言で他の歯医者でもう一度相談をと当院に来院された。
診断した結果、歯周病が進んでいる上に、歯の根っこの先に大きな膿が
貯まっている。通常であれば抜歯の診断は誤っていないと思った。
しかしその3本の歯を抜歯するとかみ合わせが崩壊してしまうので
私としては3本全て根の治療のやり直しと歯周病の治療を行なって
全て残す方針を説明した。
歯を1本も抜かないで治療しますと私が言ったとき本当にうれしそうな表情をされた。
しかし私の感情は複雑だった。
後から歯を入れる困難さに歯を残す決定はしたが本当に治療はうまくゆくのか?
その患者様がこれから時間もお金も当院に投資して得る結果が
「やっぱりダメでした!」じゃ患者様は納得されない。
私たち歯科医師はいつも揺れ動く感情を持ちながら診断と治療を繰り返している。
絶対はありえない!私たちもいつも診断を悩んでいるのだ。