災害時にこそ大切な「お口のケア」~肺炎を防ぐために私たちができること~
災害時にこそ大切な「お口のケア」~肺炎を防ぐために私たちができること~
こんにちは。
岡山なかの歯科・矯正歯科クリニック院長の中野浩輔です。
1月の「歯の話」として、今回は災害時のお口のお手入れ、口腔ケアの重要性についてお話ししたいと思います。
昨年も国内では大きな地震が発生し、さらに南海トラフ地震の可能性も現実的に語られるようになっています。こうした災害時、食料や水、避難場所などが注目されがちですが、実は「お口のケア」が命を守ることにつながるという事実をご存じでしょうか。
過去の大規模災害、特に阪神・淡路大震災では、地震そのものでは助かったにもかかわらず、災害後に肺炎で命を落とされた方が多くいらっしゃいました。その大きな原因の一つが、口腔ケア不足による「誤嚥性肺炎」です。この経験から、私たちは災害時こそ口腔ケアが非常に重要であることを学びました。
特に注意が必要な方とは?
口腔ケアは本来、すべての方に必要ですが、特に注意が必要なのは高齢者の方や、飲み込みに障害がある方です。
分かりやすい目安としては、食事中によく「ゴホゴホ」とむせる方が挙げられます。むせるということは、食べ物や唾液が誤って気管に入りやすい状態であり、肺炎のリスクが高くなります。
また注意が必要なのは、「むせないから大丈夫」と思われている方です。実は、自覚症状がないまま唾液が気管に入り、肺炎を起こすケースも少なくありません。過去に肺炎を起こしたことがある方は、特に注意が必要です。
災害時の「適切な口腔ケア」とは?
災害時の口腔ケアの基本は、
①お口の中を清潔にすること(歯みがき・うがい)
②清潔な状態を保つこと(保湿)
この2つです。
しかし、災害時には深刻な水不足が起こることも多く、通常通りの歯みがきが難しい場合があります。そのような時に知っておいてほしいポイントがあります。
水が少ない時の歯みがき方法
実は、一般的なチューブ入り歯みがき粉は、災害時にはおすすめできません。歯みがき粉が口の中に残ると、かえって乾燥を招くことがあるためです。
水が不足している場合は、
歯ブラシに歯みがき粉は付けず
少量の水だけを付けて歯を磨く
これだけでも十分に効果があります。
うがいの水も少ない場合は、一度で全部使わず、少量の水を何回かに分けてうがいをする方が、汚れを落としやすいとされています。
歯ブラシがない時はどうする?
もし歯ブラシが手元にない場合でも、何もしないのは避けてください。
タオルやティッシュペーパー、ガーゼなどで歯の表面をやさしくこするだけでも、細菌の量を減らすことができます。
「クチュクチュうがい」だけでは不十分で、何かで物理的にこすり取ることが大切です。
入れ歯を使用している方へ
入れ歯を使っている方は、人前で外すのが恥ずかしい、水が足りないなど、さまざまな事情があると思います。しかし、可能であれば食後、難しくても最低1日に1回は入れ歯を外して清掃してください。
入れ歯の表面にも、歯と同じようにプラーク(細菌のかたまり)が付着します。お口の中と同様、入れ歯にも適切なケアが必要です。
水が不足している場合は、
食器洗い用のスポンジ
使い捨てのおしぼり
などで拭うだけでも構いません。食器用洗剤があれば、それを使って洗うのも一つの方法です。
災害時だからこそ「お口の健康」を意識して
人は口から栄養や水分を取り入れることで、健康を保っています。しかし災害時には、睡眠不足や不規則な生活、栄養状態の悪化が起こりやすく、体調を崩しやすい環境になります。
その中で口腔内が不潔になると、感染症や肺炎のリスクが一気に高まってしまいます。
災害時には限界があるのも事実ですが、「いつも以上にお口の中を清潔に保とう」と意識することが、命を守る行動につながります。
日頃から正しい口腔ケアを身につけ、いざという時にも実践できるよう、ぜひ今回のお話を覚えておいてください。
岡山なかの歯科・矯正歯科クリニック
院長 中野浩輔
交通事故で前歯を1本失った方へのインプラント手術を行いました
交通事故で前歯を1本失った方へのインプラント手術を行いましたこんにちは。岡山なかの歯科・矯正歯科クリニック院長の 中野浩…
笑顔で新しい年を迎えるために 〜歯科医がすすめる「笑顔のトレーニング」〜
笑顔で新しい年を迎えるために 〜歯科医がすすめる「笑顔のトレーニング」〜こんにちは。岡山なかの歯科・矯正歯科クリニック院…