噛む力が起こした奇跡
ある時に私と妻は歯の往診、訪問歯科診療に出かけた。
1本の 電話が医院に掛かってきた。
「私の母親が体調が悪くなり、実家の九州から
岡山の私の家まで連れてきましたが
どうも入れ歯の具合が悪いようで食事を食べません。
一度、往診で見て貰えませんか?」
医院から車で20分くらい、その方のお家に伺うと
昼間なのになぜか部屋のカーテンは閉められていて
電気も薄暗く灯されていた。
理由を伺うと「母が眩しいと言うので
暗くしています!」と言われる。
「〇〇さん、はじめまして。なかの歯科の
院長の中野と言います!」と挨拶をしても
返事は無い!うわの空で目の焦点も定まっていない。
「お口の中を拝見しますよ!」と
持参した懐中電灯でお口の中を照らすと
その方は元々は上3本、下2本の歯が残っていた
部分入れ歯を使っていたが、既に全ての
歯を失われていたため、入れ歯が口の中で
踊って、食べることが出来る状態では無かった。
数回に及ぶ入れ歯の型取り、噛み合わせ、入れ歯の試適
を得て、何とかその方の新しい総入れ歯が出来上がった。
何回も通ってもその方と会話することは無く
部屋も暗いままで治療は進んだ。
完成した総入れ歯を入れて
「〇〇さん、奥歯で噛んでください!」と言って
その方が噛んだ瞬間のことを私は今でも忘れない。
噛んだ瞬間、その方の目が「クワッ!」と開き
明るい光が目の中で灯ったのを感じた。
入れ歯を入れた次の週に私と妻は
入れ歯の調整でその方のお宅に伺った。
いつもの部屋に上がると、なぜかカーテンが
開けられている。ベッドも小きれいに整理されている。
私と妻は嫌な予感を感じ、目を合わせた。
もしかしてお亡くなりになった?
訪問歯科で病院等を伺うと、先週元気であった方が
急変して今週は亡くなっていた。
良くあることだ。
次の瞬間、部屋の外のお庭から声が聞こえてきた。
急いで庭に出てみると、全く寝たきりで
話すらしなかったその方が杖を突きながら
娘さんと庭を散歩していたのだ。
本当に驚いた。
入れ歯を入れるだけで、寝たきりの方が
歩くことが出来るようになったからだ。
こう書くと、私が凄い入れ歯の達人と思われるかもしれないが
その後も寝たきりの方の入れ歯を数多く作ってきたが
歩くことが出来て、顔色も全てが別人のように
元気になったのは、その方だけだった。
一番嬉しかった夫からのプレゼント
当院はコロナの前までは「なかの歯科インプラント友の会」と言って1年に1回、今のANAクラウンプラザホテル岡山昔の岡山全日…