歯が抜けた時はリミットは60分 「緊急度№1」 直ぐに歯医者に受診
今から25年前くらいの木曜日の夏のある日
医院の電話が鳴った。
開院以来ずっと家族で通ってくれている
女性の方からの電話だった。
声の感じから凄く動転されていた。
「高校生の娘が歩道橋で転んで
前歯が抜けました。先生どうすれば
宜しいでしょうか?」
「わかりました、大切なことを話しますから
良く聞いて下さい。抜け落ちた歯が手元に
あるなら、可能なら新鮮な牛乳に漬けて
直ぐに当院にお越しください。
牛乳が無ければ短時間なら清潔なティッシュに
包んでも大丈夫です。
直ぐに当院にお越しください。」
当時は木曜日の午後は診療をしていなかったため
妻と二人で受け入れの準備を進める。
ご自宅が最上稲荷近くで当院から30分は掛かる。
実は、怪我で歯が抜け落ちた時
歯の根っこに付着している歯根膜と言う
膜が生きているか?死んでしまうかが?
歯の保存の分かれ道である。
そのリミットは60分と言われている。
怪我をしての直ぐの電話、30分の来院なら
何とか60分のリミットはクリアできる。
慌てた様子で来院されたお母様の手元には
ティッシュがあり、お嬢さんの口元は
血だらけの様相だあった。
ティッシュを開けたお母様が小さく叫んだ!
「無い、歯が無い!!」
「お母さん、本当にこのティッシュに歯を
包んだんですか?」
「いや私も血だらけの娘を見て気が動転して
よく覚えていません。」
ここであきらめる訳にはいかない。
「怪我をした歩道橋に戻りましょう。」
そして3名で歩道橋に戻ると、あった!
そこにあった。
血だらけの前歯が1本そこに落ちていたのだ。
持参していた生理食塩水を満たしたシャーレに
抜け落ちた前歯を入れて診療室に戻る。
その歯を麻酔下で再植と言って
再度抜けた位置に戻して
ワイヤーでレジン固定する。
何とか 元の位置に戻した。
当初の予後は問題なかったのだが
6か月、1年と経過してゆくうちに
段々と内部吸収が進行。
体が生体が前歯を異物と判断して
自ら溶かす反応が出てしまった。
この女の子の前歯は彼女が二十歳で
成人するまで持つのだろうか?
不安を覚えながら経過を観察していたが
お母様が罪の意識を強く感じたのか?
当院の対応に不安を感じたのか?
数年で来院が途絶える。
あの女性、今であれば42歳になっているはず。
前歯は既に抜歯されていてブリッジになっているのか?
インプラントが入れられているかは
今の私には不明であるが
歯が抜けた時はリミットは60分と是非覚えて欲しい。
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