バスケの試合中に前歯がめり込んだ高校生!歯の外傷は時間との勝負です
バスケの試合中に前歯がめり込んだ高校生!歯の外傷は時間との勝負です
本日の午後、いつものように多くの患者さんの診療をしている最中に、受付に1本の電話が入りました。
電話の相手は、ある高校の先生でした。
「バスケットボールの試合中に選手同士の頭が強くぶつかりました。県外から来ている高校生なのですが、下唇が大きく裂けて出血しています。それだけでなく、上の前歯2本が中にめり込んでしまって、奥歯で噛むこともできません。今すぐ診てもらえませんか?」
その日の予約は、既に一杯でした。
しかし、私は受付スタッフにすぐに伝えました。
「何とかするから、今すぐ来てもらって!」
なぜなら、歯のケガ、いわゆる「歯の外傷」は、場合によっては時間との勝負になるからです。
電話からわずか15分で到着
電話から15分ほどして、背の高い高校生がご両親と一緒に来院されました。
お口を確認すると、想像していた以上の状態でした。
下唇は幅5センチほど大きく裂け、深さも1センチほどあり、かなり出血しています。
さらに問題だったのが上の前歯です。
強い衝撃によって上の前歯2本が中にめり込んで、本来の位置から大きくずれていました。
そのため噛み合わせが完全に狂ってしまい、奥歯で噛むことすらできない状態です。
これはすぐに処置が必要だと判断しました。
まずは大きく裂けた下唇を縫合
私は日頃からインプラント治療を数多く行っていますので、切開や縫合などの外科処置には慣れています。
すぐに局所麻酔を行い、裂けた下唇を丁寧に5針縫合しました。
縫合にかかった時間は、わずか5分ほど。
しかし、今回の本当の問題はここからです。
上の前歯2本をどうするか?
外傷によって位置が大きく変わってしまった歯を、そのまま放置するわけにはいきません。
麻酔が効いていることを確認しながら、めり込んだ2本の前歯を慎重に本来の位置へと戻していきます。
いわゆる「整復」です。
もちろん、位置を戻しただけでは不安定です。
そこで矯正治療で使用するワイヤーを取り出しました。
外科と矯正、両方の経験が生きた瞬間
歯並びに合わせて矯正用ワイヤーを細かく曲げ、外傷を受けた歯だけではなく周囲の歯も利用して、接着性レジンでしっかり固定していきます。
この処置に20数分。
私は日頃から矯正治療も行っていますので、ワイヤーを曲げて歯に合わせる作業にも慣れています。
今回のような緊急事態では、
「外科処置ができること」
そして、
「矯正的なワイヤー固定ができること」
この両方の経験が役に立ちました。
最初に患者さんを診てから30分弱。
下唇の縫合から前歯2本の整復、ワイヤーによる固定まで、必要と判断した処置をすべて終えることができました。
処置が終わった高校生の顔を見て、私もようやく少し安心しました。
「早く来てもらえて本当に良かった」
一緒に来院されていたご両親にも、現在の状態と行った処置について詳しく説明しました。
今回は県外から試合に来られていた高校生でしたので、今後は地元へ戻られます。
そのため、下唇の糸の抜糸や、一定期間が経過した後のワイヤー・レジン固定の除去、そして外傷を受けた前歯の経過観察については、地元の歯科医院できちんと診てもらうようにお願いしました。
外傷を受けた歯は、その場で元の位置に戻ったから「治った」とは限りません。
今後、歯の神経や歯根、周囲の組織に変化が起こらないか、長期的な経過観察がとても大切になります。
現時点では大きな後遺症が残らないことを願っていますが、そればかりは今後の経過を診なければ分かりません。
ただ、私としては、
「早く来てもらえたので、今できることはすべてできた」
そう感じています。
歯が折れた、抜けた、めり込んだら、まず歯科医院へ
スポーツをしているお子さんを持つ保護者の方には、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。
バスケットボールだけではありません。
野球、サッカー、ラグビー、柔道など、スポーツ中に顔面を強打し、前歯を折ったり、位置がずれたり、場合によっては歯そのものが完全に抜けてしまうことがあります。
そんな時、
「少し様子を見よう」
「明日になってから歯医者へ行こう」
とは考えないでください。
歯の外傷では、受診までの時間がその後の歯の運命に影響することがあります。
特に永久歯が完全に抜け落ちてしまった場合などは、さらに迅速な対応が求められます。
今回も高校の先生がすぐに電話をくださり、そして電話から15分という短時間で来院していただけたことは、本当に良かったと思っています。
私が「歯の外傷は時間との勝負」と言い続ける理由
実は、私が歯のケガをした患者さんから連絡があった時に、
「予約が一杯だから明日来てください」
とは簡単に言えないのには、理由があります。
私自身、これまで長く歯科医師を続けてきた中で、数多くの歯の外傷を診てきました。
その経験の中には、
「あの時、もう少し早く来てもらえていたら……」
と感じたケースもあります。
逆に今回のように、事故から短時間で来院してもらえたからこそ、すぐに必要な処置ができたケースもあります。
歯の外傷は時間との勝負です。
そして実は、私がここまで「時間」にこだわるようになった背景には、今でも忘れることのできない、ある患者さんとの経験があります。
その出来事は、私の歯科医師人生の中でも非常に強く心に残っています。
この話については、また改めて院長ブログで書きたいと思います。
今日来院してくれた高校生が、一日も早く大好きなバスケットボールに復帰できること。
そして何年、何十年先も、今回外傷を受けた前歯を自分の歯として使い続けられること。
歯科医師として、心から願っています。
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